終わりなき旅
「ねえねえ、『終わりなき旅』って曲、いいよね!」
「ん? 死後のセカイの話?」
「なんでそうなる!?」
あたしの幼なじみは、こういうとこが変わってる。
なんで、素敵な曲のタイトルに、死後の世界とか、ぶつけてくるかな。
でも、ちょっと気になるから、話に乗ってみる。
「死後の世界って。なんでそう思うの?」
幼なじみは、『何を当たり前のことを聞くんだ』的な顔しながら、説明をくれる。
「だって、生きるのには必ず『終わり』はあるだろう? その点、死んだら、旅は終わらない」
「……は?」
いや、なんで?? なんで旅するのを前提にして考えるの?
「あたし、ホントにあんたの考えることが分からないんだけど」
「そう? 人間はいつか、死ぬもので。そしたら必ず、旅に出るって。よくじいちゃんがいうんだ」
なるほど。あんたの謎な考え方はあのお祖父さんの影響か。
「でも、よく魂って『生き返り』とかも言うけど、それはないの?」
「ない」
なんで即答。
「だって、じいちゃんは一生、俺の『祖父ちゃん』だから。ほかの誰のでもなく、さ」
「うーん……。あのお祖父さんの理屈はよく分からないけど。……まあ、あんたがお祖父さんをすんごく慕ってるのだけは、よーくわかった」
何故か始まりかけた、「終わりなき旅」説は論争にはならず。しかもその後も、幼なじみはお祖父さんのよく分からない理屈を、たっくさん話して聞かせてくる。
旅じゃあないけど、この話は、いつ終わるのだろうか。
こいつの、お祖父さんへの愛が強い、というか重い。
でも、不思議と「聞かなきゃ良かった」とまでは思わない。まさかあたしも、感化された? いやいや、それはさすがに。
「――で、って。……聞いてる?」
「うんまあ、もちろん?」
「なんで疑問系?」
こいつの長い話は、はたして終わりはどこに着地するのだろうか。
いやいや、だってそれは終わってくれないと、困るんだからね? 特にあたしが。
5/31/2024, 3:46:04 AM