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「ごめんね」

ぽつりと呟いたその言葉は、思っていたよりも頼りない響きで部屋を満たした。
わたしのその言葉を聞いて顔を上げた彼は、一瞬眉をひそめて、何かを耐えるように、やり過ごすように下唇を噛んだ。

「私が、何に怒っているのかわからないのに、そう謝るの?」

いつもとは違う、硬い声に思わず体を強ばらせた。
わからない。何が彼の気に障ったのか。けれど、確かに彼はわたしに怒っていた。だから口から謝罪が転げ出た。

「……わからない、のも、ごめん」
「……いいよ、もう。」

諦めたように彼はそう呟いて、肩を落とした。

5/29/2023, 3:44:03 PM