わをん

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『雪』

雪国の朝は早い。まだ暗い早朝に黄色いパトランプの光と重機の轟音が家の前の道を通り過ぎてゆく。車道に積もりに積もった雪を空けるために早くから働いている除雪車の人たちに心のなかで頭を下げ、来たる家の前の雪かきのために気合いをいれてえいやと起き出す。ポストに新聞はすでに届いていた。除雪が行き届かず申し訳ないと新聞屋さんにもまた心のなかで頭を下げて黙々と目の前の雪をスコップでどかしていく。汗ばむぐらいに雪をかいて一息ついた頃に晴れ間が見えて朝日が差してきた。雪国に暮らしていると雪にいろいろと困らされることが多い。隣近所の同級生の中には雪国に見切りをつけて遠くに越してしまった人もいる。けれど、照り返す雪の眩しさや新雪に残る動物の足跡、そして遠くの山に青く映る木々と白のコントラストを見るたびに美しいと思う。雪のことを嫌いにはなりきれない。ふうとひとつ息を吐くと白い靄がきらめいて消えていく。気合いを入れ直して残る雪かきを再開することにした。

1/8/2024, 3:34:59 AM