のぞみ

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突然の君の訪問


家には私1人だった。両親は仕事だ。
私は病気で高校にも入学式以来行けていなかった。

なぜ、こんなに私の体は弱いのだろう。
なぜこんなに私だけ苦しい思いをしなければならないのだろう。

1人静まり返っている部屋で考える私にはマイナスで暗いことしか考えられない。


もういっそ死んだ方が楽なのではないか。



そんなバカなことを考えた時

ピーポーンポーンパーンポーン


チャイムがなった。

誰だろうかと腰を上げる。
玄関の扉を開けて待っていたのは1人の高校生ぐらいの男子だった。

「あの・・・・・・・どちらさまでしょうか?」



「あぁ、覚えてない?入学式の時に少し話した夏夜。
お見舞いにきた!外暑すぎるからさ、家に入れてくれ
ない?」


なんてずうずうしい人なんだろうか。

そう思いながらも彼の屈託のない笑顔に何も言えずに中に入れてしまった。
2人分のお茶を入れてイスに座ると
「ねぇ、ねぇ!君はさ、毎日何してるの?
毎日、暇?」
いきなりしすぎる彼の質問に気押されながらも


「うん。暇。」

短く答えると

「そうだよな!じゃあ、俺毎日くるな?」

毎日・・・・・・・
本当に遠慮を知らない子だと思った。
でも、キツくて会えない日もあると思う。と伝えるとそれでも来て帰ると言った。


それから言われた通り毎日毎日彼は家に訪れた。
来て、ほとんど一方的に喋って帰っていく。

その繰り返しだ。


私的にはそれがすごく楽だった。
気を遣わないでいいし、黙っておいても彼が喋ってくれるから喋らなくても相槌を打つだけで時間があっという間に過ぎていく。



ある日
ピタリといつも来ていたはずの彼が来なくなった。
今日だけかと思いそんなに気にしなかったけれど来ない日が何日も続いた。


おかしいと思いたまに様子を見に来てくれる高校の先生に聞いた。




「あの・・・・・・・・・・・
夏夜という子なんですけど元気ですか?」


それを聞くと先生は悲しい顔をして言った。





「夏夜は数日前に亡くなってしまった。
実は夏夜は重い病気で、医師からはずっと前から余命宣告をされていた。」





頭が真っ白になる。
亡くなった?夏夜が?
信じられない。
私が固まっていると先生は悲しい顔のままある物を渡してきた。

「夏夜は自分が死んだ後、お前が夏夜のことを口にだしたら渡して欲しいって手紙を預かっていた。」


そう言って先生は去って言った。


手紙を開くとそこには一枚

の真っ白な紙に




"笑って生きろ''



そう書かれていた。


自分の目から温かいモノがでるのを感じた。




彼がどんな思いでこう書いたのかは分からない。
どんな思いで毎日私と会っていたのかは分からない。

けれど彼は私と同じように戦っていた。
彼は笑っていた。
彼は楽しそうに毎日を話していた。
辛いことは話さずに楽しいことしか話さなかった。


残された私のできることは
彼の心からのメッセージに答えることだ。
彼の分まで楽しく笑って生きることだ。




あの時の、君の突然の訪問のおかげで私は前を向いて生きられそうだ。




ありがとう。



空を見て心の中でつぶやいたら



見張ってるからな!
頑張れよ!





そう声が聞こえた。



                      完



読んでくれてありがとうございました。

8/29/2023, 8:58:18 AM