オアシス
暑い。なんでこんな炎天下に外回りなんか。
こんな日には自動販売機がオアシスになる。
そこの角を曲がった先に自販機がなければ死さえ頭をよぎる。
オアシスor死すって感じだ。
角を曲がる。
あった。俺のオアシス。
助かった。すぐに財布から小銭を出す。
500円玉1枚。これが俺の生命線だ。
投入口に入れる、間際で落としてしまった。
焦らず行方を目で追う。
500円玉はコロコロと自販機の下へ消えてった。
これはまずい!急いで這いつくばる。
アスファルトは焼けるように熱いが気にしてはいられない。
見えた。頑張れば手の届きそうな位置。
砂漠のオアシスの水を貪る旅人のように、姿勢を低くし、必死で手をのばす。
指先がなんとかかかり、救出することができた。俺の生命線。
すぐに自販機に入れ、麦茶のボタンを押す。ミネラルなんてどうでもいいが、水よりお茶を選んでしまう。
ゴトンと落下音。
お釣りより先に麦茶に手をのばす。
フタを開け、一気に身体へ流し込む。
「ふぅー」
快感だ。
少し出てきた元気に任せて歩き出す。
さっきまで呪っていた快晴の空も、今はなんだか晴れやかに思える。
風が吹いてくる。気持ちいい。
頭がすっきりしてくる。
いや、何か忘れているような…
…お釣りだ。
だいぶ歩いてきてしまった。すぐに引き返す。
自販機に着き、お釣り出口を見る。
お釣りは蜃気楼のように消えていた。
7/28/2025, 10:07:47 AM