カラオケを出たら辺りは暗くなっていた。
「5時かあ」
スマホを見て仁美がつぶやく。途端に防災無線の音楽が流れた。夕焼け小焼けだった。
「こんな都会でも、地元と同じ曲流すんだねえ」
仁美が目を細める。ビルとビルの間でピンクに染まった空。なぜだろう、一緒にいるのに寂しくて。
「あー?」
仁美がこちらを向いて不意に明るい声を出す。
「カレーの匂いがして期待したのに、うちじゃなかった、みたいな顔してる」
人を指ささないで、と払い先に立って歩いた。仁美だって寂しいと思う。じゃなきゃこんな時間に私とここに来なかったよね。
「ね、次どこ行く?」
追いついた仁美を振り返ると、自然な気軽さを装ってその手を取り、私は意識して思い切り口角を上げた。
『寂しくて』
11/11/2025, 9:58:56 AM