夜の祝福あれ

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🌙『フィルターの向こう側』

第一章:笑顔の仮面

昼休みの教室。陽菜はいつものように、友達の輪の中心で笑っていた。
「陽菜ってほんと、いつも元気だよね」
「悩みとか、なさそう〜」

陽菜は笑って答える。「悩みなんて、笑ってれば消えるよ」

でも、誰も知らない。
その笑顔が、どれだけの“演技”でできているか。
誰にも頼れない。誰にも見せられない。
それが、陽菜の“生き方”だった。

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第二章:静かな気配

放課後、図書室。陽菜は一人で本を読んでいた。
そこに、藤堂が静かに近づいてきた。

「……無理して笑うの、疲れない?」

陽菜は驚いた。誰にも気づかれたことがなかった。
「……何のこと?」

「君の笑顔、目が笑ってない。ずっと気になってた」

陽菜は、言葉を失った。
藤堂の瞳は、まっすぐだった。
誰にも見抜かれたことのない“フィルター”を、彼は見通していた。

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第三章:頼るという選択

その日、陽菜は初めて誰かに本音を話した。
家のこと。過去のこと。
誰にも言えなかった孤独を、ぽつりぽつりと語った。

藤堂は、黙って聞いていた。
否定も、慰めも、しなかった。
ただ、隣にいてくれた。

「……頼ってもいいんだよ。誰かに全部見せるの、怖いけど」

陽菜は、涙を流した。
それは、フィルターの外に出た“本当の自分”だった。

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最終章:フィルターの向こう側

数日後、陽菜はいつものように笑っていた。
でも、その笑顔は、少しだけ違っていた。
誰かに見せてもいいと思える、柔らかい笑顔だった。

藤堂が隣に立つ。
「今日の笑顔は、ちゃんと目も笑ってる」

陽菜は、少し照れたように笑った。
「うん。もう、フィルターはいらないかも」

夕焼けの光が、二人の影を長く伸ばしていた。

9/10/2025, 5:56:07 AM