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夏と秋がゆきかう空の通い路には、どちらかに涼しい風が吹いているのだろうか。

あなたとサヨナラのキスをしたとき、遠い昔の故人が詠んだ、そんな詩を思い出した。

まだ夏の真ん中で、まるで秋空の上澄みをすくったような風が夏草を揺らしていた。

その心地よさを頬で感じながら、私は深く瞼を閉じる。ああそうか、と思った。

季節は一方的に過ぎ去ってゆき、とどまることを知らないのだ。

ひと夏の恋とはいうけれど、これであなたと逢うことはないという予感も、ある意味で必然的なのかもしれない。

私は刹那を生きる夏虫で、燃える火に飛び込み身を焦がす。はたまた、水草のかげから月をみる川底の魚。にぎやかで、儚くて、命の影が濃い。 

何もかもがキラキラと輝いているから、
よけいに切ない。

あなたの唇がはなれてゆき、
夏の匂いを遠くに感じる。


6/28/2023, 1:37:56 PM