お祖父さんと、一緒に田んぼにいたときに、ふとこんな話になった。
「なぁ、あの雲がどんな形に見える?」
お祖父さんは空を指差して、そう言った。
私は、
〔どの雲?あそこにある入道雲?それとも、あっちにある大っきい真っ白なうねうねした雲?〕
軽トラの荷台に腰掛けながら私は訪ねた。
「どっちもだな。」
と、お祖父さんは私の隣に腰を掛けながら言った。
〔そうだなぁ。あっちの入道雲は、ありきたりだけど
シュークリームみたいだね。〕
私が言うと、お祖父さんは
「ホントにありきたりだな。俺には羊の毛みたいに見える。」
笑いながらお祖父さんはそう話した。
〔それもありきたりじゃん。それで、あっちのうねうねした雲は、私にはじいちゃんがタバコ吸ってるときの煙。〕
私が汗を拭いながら、新しい答えを言うと、
「なるほどなぁ。俺にはヘビとか龍とか、そんな感じにしか見えねぇや。」
少し感心した様子で、お祖父さんは言った。
〔じいちゃんがさ、空模様っていうか、雲模様?とか聞いて来るの珍しいね。〕
お祖父さんの方を見ながら、私がそう話しかけると、
「なぁに、ちょっとした気まぐれだよ。いくら孫相手とはいえ、話がないと気まずいだろ?」
そんな風に笑っていた。
別に、話なんかしてなくたって私は、お祖父さんと過ごせれば。
そんな言葉は、まだ若い私には出てこなかった。
〔なにそれ。じいちゃんとぼーっとしていられるのも、幸せだよ。〕
空を見るとふと思う、声に出せなかった、大事な気持ち。
あの笑顔と一緒に思い出す。
8/19/2023, 10:45:37 AM