他人から見ればゴミなのでしょう。もっと価値のあるものはあるのかもしれませんし、綺麗にすれば見栄えがよくなるのかもしれません。誰よりも、私がそれを分かっているのです。
しおれて変色してしまった花冠。
花も葉もすっかり枯れ落ちて、もう冠の形をほとんど成してはおりません。
ええ、あなたの仰る通り。
同じ花を探して作り直す方法もあるのでしょう。
ここでなら、ドライフラワーにするという手もあるのでしょう。
でも、いいのです。
私にとってこの花冠は、花の美しさは二の次で。
あの方が摘んだ花。
あの方が編んだ冠。
それが私にとって、何にも変え難い宝物なのです。
だからどうか、このままで。
色あせた花とくたびれた葉。
金細工を扱うかのような繊細な手つきでそれに触れる彼は·····それはそれは幸せそうな顔をしていて·····私は胸が締め付けられる思いがした。
END
「宝物」
11/20/2024, 3:28:27 PM