小説を投稿する璻(すい)

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'窓越しに見えるのは'


窓際、前から5番目。一番グラウンドが見わたせるここが、特等席。
今日も、野球を励む彼を見る。ボール拾いを一生懸命、時折地面の砂をいじりながら。休憩時間は必ず木陰の下で水飲んで、ちょっとだけ校舎を見渡す、そんな彼を。
その姿を目に焼き付けて、手元のキャンバスに筆を置いた。下書きもなんにもしないのが、より自然な絵の感じがして好きだから、こんな風に書いていく。

ふと、窓から風が入ってきた。思わず目を向ける。すると、校舎の近くのボールを取りに来た彼と目が合った気がした。
体感、1分。でも実際には3秒くらい。
ふわふわした気持ちが抜けなくて、呆然と窓の外を見つめたままで立ち尽くす。

彼が、またこっちを見たような。
窓越しに見えるのは、そんな幻想。

7/1/2021, 12:21:51 PM