「行かないで、と言ったのに。」
可愛らしい大きな目に、ほどよい大きさの唇。
真っ黒の髪にビビットピンクのピン留め。
可愛いお洋服は少し地雷っぽい。
そんな可愛い私の口癖は。
「行かないで。」
上目遣いで、相手の脳を溶かすような言葉で。
大好きと伝える。
貴方を愛していた私の貴方を引き留めるための口癖。
これが私たちの日常だったでしょう?
大きな目にはたくさんの涙が浮かんで、強く噛み締めた血色の悪い唇。
黒い髪は冷や汗で濡れている。
服は直ぐに着れるようなちょっとしたワンピース。
ピン留めなんてつける余裕なくて、病院のベットで
白くなって寝ている貴方の手をただ、ただ握る。
嫌だ。いやだよ。
「行かないで。」
きっとこの言葉は今まで言った言葉のなかで一番重いものだった。
「逝かないで。」
線が切れたようにながら落ちる涙は別れを惜しむ涙。
あぁ。行かないで。
貴方を引き留めるための口癖。
きっと将来は言うことがなくなっているんだろう。
「行かないで。」
と言ったのに、貴方はどこか遠くに行ってしまった。
11/4/2025, 10:02:38 AM