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この場所で
「父上」
『どうした?息子よ』
「今日から教師殿が古語を教えてくれるんです」
『そうか、彼奴の事はわしもよく知っておる。きっと分かりやすく教えるであろう。確と学べよ』
「はい!…あの、父上」
『ん?』
「古語は大変難解だと聞きます。もし、分からないところがあったら、聞きに来てもよろしいですか?」
『ううむ。教えてやりたいがな…』
「やはり駄目でしょうか」
『ああいや、なに。恥ずかしい話ではあるのだが、私は古語が読めんのだ』
「え?」
『昔は今ほど古語の研究が盛んではなくてな、読めない文字も多く、学ぼうとする者もいなかったのだよ』
「そうだったんですか」
『ああ、今から学ぼうにも多忙ゆえままならん。それに、臣下達からも反対されてなぁ。すまんな』
「いえ!」

[それではここで一旦休憩としましょうか]
「はい」
[ああ、そうだ。殿下]
「何ですか?」
[無礼を承知で申し上げますが、絶対に陛下に古語を教えないでください]
「どうしてですか?」
[…どうしても、です。どうかお願いします]
「あ、頭を上げてください!分かりましたから!」
[ありがとうございます]

「父上!綺麗な花畑ですね!城にこんな場所があったなんて!知りませんでした!」
『ははは、はしゃぎ過ぎて転ぶなよ』
「もうそんな子供じゃありません!」
『そうだな、本当に大きくなった』
「…父上?これは、一体?」
『ん?ああ、それは墓だよ。わしの親友のな』
「父上の、親友の…?」
『おお、そうだ!』
「は、はい?」
『お前にはこの墓の文字が読めるか?どうやら古語で書いてあるようなのだが』
「…ご、ごめんなさい父上。読めません。その、難しくて」
『そうか、やはり古語とは難解なのだな。今までもこれを読めた奴はおらんのだ』
「父上のご親友は、どのような人だったのですか?」
『博識で、よく頭の回る奴でな。最後の最後までわしについて来てくれた。一番の忠臣だよ』
「そう、だったんですね」
『奴の遺言でな。一日に一度、わしが幸せだと感じた事を、この場所でこうして報告しておるのだ』
「父上にとって、大事な友人だったんですね」
『ああ。…病で呆気なく死におってからに』
「…」

 帰る間際に振り返る。
 墓に刻まれた文字を見る。

Everything you tell me is what you took from me before.

《キャスト》
・王様
大規模な革命を起こし王になった。
・王子様
教えないことにした。
・教師
全てを知って何もできなかった。
《補足》
・古語
≠英語。表現の都合上こうなりました。

2/12/2024, 6:57:01 AM