【ベルの音】
朝焼けに染まる空を眺めながら、白い息を吐き出した。目の前のプラットホームには、時間調整のために電車が停まっている。これに乗れば、もう。私はこの町には帰ってこられない。
生まれ育ったこの町も、両親も、友人たちも、決して嫌いなわけじゃない。だけどそれでも、全ての道を決められた選択肢のカケラもない人生なんてごめんだ。自分の足で、自由に、私は歩いていきたい。
ジリジリと鳴り響く発車ベルの音。それに促されるように、私は電車へと乗り込む。ゆっくりと電車は発車した。やがて速度を上げ、私の生まれ故郷を遥か彼方へと置き去りにしていく。
ほんの少しの寂しさと、それ以上の清々しさを感じながら。私は電車の揺れに身を預けた。
12/20/2023, 9:50:10 PM