ㅤ三月には珍しく雪の降った朝。小さな水の粒が、歩くうちにどんどん大きなぼたん雪に変わった。白に覆われた視界のなか並んで橋に差し掛かると、川には白い霧が立ち上っていた。寒さとは裏腹に、靄はまるで湯気のように見える。
「なんか温泉みたい!」
ㅤ橋の真ん中で立ち止まった私に、
「飛び込んでみたら?」
ㅤとあなたは笑った。
「これって、冬の始まる頃にに多くなかった?」
「だね」
ㅤ傘に積もった雪を落としてあなたが頷く。
ㅤ川の水と空気。熱さと冷たさ。その温度差が開けば、冬の終わりにも始まりのような現象が起こる。
ㅤもしかしたら、と私は隣をチラリと見る。いつもクールなあなたの、熱くなったところを見たことがない。熱さと冷たさが極端になれば、人からも湯気が出るのかな。
ㅤ大気に溶けるはずの湯気が、消える先はどこ?
『どこ?』
3/19/2025, 1:00:46 PM