会話はいつも最低限。
社交辞令と情報伝達だけ。
いつも不機嫌そうに眉間に皺を刻んで、きつい視線を私に向けて。
そうして要件だけ言い終わるとくるりと背を向けてさっさと行ってしまう。
そんな君の背中を、ずっとずっと見続けてきた。
本当は去っていく君の背中を呼び止めて、きちんと向き合って話がしたかった。
君が何に怒っているのか。
君が何を大切にしているのか。
あの時面と向かって話し合って、思いをぶつけ合えていたなら、もしかしたら違った結末もあったのかもしれない。
そうだね。
私達は圧倒的に会話が足りなかった。
思い込みと、勘違いと、嫉妬と、自己犠牲。
そんなものに酔って、目を曇らせて、本当に望むものを知ろうとしなかった。荷物を分け合うということをしなかった。
だから今度は、もう間違えない。
今度は君の背中を呼び止める。
君の望むものを、本当の気持ちを、受け止める。
今度こそ、私は――。
END
「君の背中」
2/9/2025, 2:45:03 PM