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目が覚めると、響く時計の針を聞きながら、ゆっくりとベッドから起き上がる。冬になると、お布団との別れは一段と名残惜しくなる。
朝起きたらまず、ベランダへ続く窓のカーテンを開ける。この時期の窓のガラスは手で触れるととても冷たかった。
雨音は聞こえないから、今日はきっと晴れ。朝の空気を肌で感じて背伸びをする。
そうしている間に母が朝食を知らせにきた。母の良く通る声は、起きたばかりの私の眠気を吹き飛ばしてくれる。私は母に手を引かれ、リビングへと向かう。先ほどまで水仕事をしていたせいか、少し冷えている。
部屋のドアを開けると、焼きたてのパンの匂いと、挽きたてのコーヒーのいい香りがしてきた。
私が部屋に着く頃にはいつも、父がコーヒーカップを片手に持って新聞を広げている。私は新聞を読んだことがないけど、きっと難しいことがたくさん書いてあるのだろう。
私はいつものように「おはよう」とあいさつすると、きっとにこやかに笑っているであろう声色で返してくれる。
そうしている間に兄が遅れてやってくる。慌ただしく席に着く兄とも、いつものようにあいさつを交わす。
最近は髪の毛のセットに時間をかけているみたいだ。いつもより少し声が低い気がする。いつもより少しだけ。
我が家ではいつも食パンとコーヒー。食パンにはバター時々いちごジャム。
これが私の見えている世界。
特別なことなんて一つもないけど、この日常に確かな幸せを感じている。
同じ感触。同じ匂い。同じ会話に同じ声。
未来はきっと変わらない。
私は何も見えないけれど。


お題:見えない未来へ

11/20/2025, 10:05:51 PM