#38 『水たまりに映る空』
私は息をのんだ。水たまりの中から現れたもう一人の私が、
私に向かって、ゆっくりと顔を上げた。
その目は私を深く見つめ、そして、にやりと笑った。
私の足が水たまりの中に引きずり込まれていく。
抵抗しようにも、体が思うように動かない。
視界が水面の揺らぎとともに歪み、やがて、私の視界を埋め尽くしたのはあの水たまりに映っていた不自然なほど濃い夕焼け空だった。私はあの水たまりの「向こう側」に閉じ込められてしまったのだ。
最後に聞こえたのは、、、
どこか遠くで楽しげな笑い声がするような気がした。
あの水たまりは今もそこにあり、次の「私」を映し出しているのかもしれない。
---閉じ込められた世界---
6/5/2025, 11:51:58 AM