「ねぇ、あなた?」
「はい、何でしょう」
「もし、明日世界が終わるなら、あなたは何をしたい?」
「そっ、それは難しい質問ですね…」
彼は、私が非現実的な質問をしたにも関わらず、真剣な表情で考え込んでいた。私も自分だったらどうするのか考えて、言おうとした時、先に彼が口を開いた。
「でも、そうですね。明日世界が滅ぶなら、最後まで貴方の傍に居たいです」
案の定、全く同じ答えだった。私も、彼とずっと一緒に一日を過ごして、贅沢をして、満足して終わりたいと思っていたのだ。
「私も同じだよ。あなたと共に過ごして、いつもならしない贅沢をして、最後に抱き合って生を終えられるなら、とても幸せだと思う」
そう言った私の顔は、微笑みながらも、少し悲しげな、難しい表情をしていたと思う。まだ私たちは若いし、経験も少ない。未練が無いかと言われたら、それは嘘になる。そんな様子の私を見た彼は、優しく微笑みながら私の肩に手を置いた。
「大丈夫ですよ、本当に滅ぶ訳じゃないんですから。そんな顔しないでください」
「うん…」
「これからも、人生に悔いがないように、二人で色々なものを見に行きましょう。そして、たくさん美味しいものも食べましょうよ」
「ありがとう…」
私たちはあまり歳に差がないはずなのに、彼は私と違って本当に強いなぁと思った。きっと彼は、私たちが一つになる運命を信じてやまないのだろう。
テーマ「明日世界が終わるなら」
5/6/2024, 11:12:02 AM