快晴を喜べない僕は、雨降りを恨むこともない。そうは言ってもやっぱり降らない方がいいのだと思う。だって今日の主役は僕じゃないから。姉は気の強い人だった。昔から僕と喧嘩ばかりして。誰にも頼らないくせして何にもできやしないの。そんな姉の披露宴だもんな。時間が人を変えたのだとしたら、それはそれは結構なことだと思う。何より彼女が幸せなら。信号が赤に変わって、シートベルトが僕を締め付けた。油絵のような曇り空を車窓から眺めていると、考え事がしたくなるのは何故だろうか。それも多少ばかりブルーなやつ。きっとそうは見えないと思うけど、僕だって、結婚願望ゼロってわけじゃない。所帯をもって人の温かみに触れて、穏やかに生活できたら何よりいいと願っている。でも相手がいないのでは仕方がない。本当は今、このときだって助手席で愛を振り撒いてただ僕のシニシズムを軽蔑してくれる女の子が欲しい。でも上手くいかない。こんな性格だから好かれないのか、好かれないのからこんな性格なのかは分からないけど。いや、多分前者なんだろうな。ああ、雨の一つでも降ればいいのに、なんて言葉が浮かんでしまった僕を誰か殺してくれ。そんなとき聞こえてきたのは馴染みのない誰かの歌声だった。
みんなが泣いているときに
上手く泣けなくてもいいのさ
みんなが笑っているときに
上手く笑えなくてもいいのさ
AMラジオからシンガーソングライターが、僕ではない誰かを慰めるために。信号がやっと青になって、僕は空から前方に視線を戻した。前の車はみな先を急いていく。フロントガラスにはたった今、大きな雨粒が落ちてきた。僕も鼻から息を一つ吸って口から吐き出し、ゆっくりとアクセルを踏んで加速を始める。
空が泣く Momの音楽よ永遠であれ
9/17/2023, 3:39:35 AM