海のさざ波が聞こえる。 私は一人、目を覚ました。 空には満月。 青白い空を視界に収める。 ゆっくりと半身を起こし、辺りを見渡す。一面赤かった。風に触れ、花びらがそよぐ。 彼岸花だ。優しく包む月光に彼岸花が照らされる。 しんと悲しくなる。美しいのに、無性に悲しくなる。と、目の前で誰かの影が行き過ぎる。手を伸ばす、痣がある女性の影。誰、だったか。忘れてしまったけれど何故か愛おしい。私は目閉じ、彼女の影を探した。〈続〉
10/11/2025, 12:43:30 PM