『僕から君へ 01』
あの人から聞いたことがあった
君の嫌がる季節のこと
アスファルトが鉄板みたいに焦げて、
田んぼの土がお風呂みたいに茹だって、
そうして僕たちの靴が地球の熱に熔ける頃。
そして、吐息が白くなると怒るあの人のことを思い出す。
僕の知り合いに、
冬の暗がりを怖がる人はいないから
きっと知り得ないんだろうな
寒さを、冷たさを、雪を、日の昇らない季節を嫌う人のこと
お正月の特番を最近まで溜め録りしていたのが嘘みたいに、
懐かしくなるよね。この光景が
君がスイカを買ってきてくれて
アイスはチョコとソーダ、どっちが良いと聞いてくれて
素麺のピンクのほうをおすそ分けしてくれて
扇風機の前で一緒に宇宙人になって
蚊取り線香を焚いて、い草で横になってお昼寝する
そうして西日に起こされる
眩しくて目が開けられないのに、
明日のラジオ体操に間に合わなくなるから
夜は早めに寝なきゃいけない
今でも嘘みたい。
むしろ、夏が僕を迎えに来てくれたみたい。
「今年も、君を待ってるよ〜。って、夏の空がね」
【ただいま、夏。】 2025-08-05
8/4/2025, 3:34:56 PM