『まって』
自転車で15分の距離。
年中さんの息子は走って帰りたいという。
えぇ…走りたいの?
自転車で15分ということは、歩くとだいたい30分。
しかも途中でアリとか見始めたりするよね?
ということはいったい時間はどれだけかかるの?
ちょっとまって。この後も予定があるのよ。
なるべく早く帰りたいの。
でもまって。
ここでダメと言ったら、私は子どもの主体性を潰すことになるのか?
答えを出せずに固まる私をよそに、息子はおかまいなしに自分の荷物を自転車のカゴに雑に放り込み、一目散に駆け出す。
あっ!まって。本当にまって。
この道は、少ないとはいえ車も通るのよ。
慌てて、雑に放り込まれた荷物たちを落ちないように、これまた雑に整えながら叫ぶ。
交差点止まって!お願いまって!
あぁ止まった。良かった、今のうちに追い付ける。
と思うのもつかの間、本人なりの左右確認をして、再び走り出す。
みるみるうちに遠くなる息子の背中。
5歳児の足は思いの外早い。
全速力で自転車をこぎ出す。
「まって」という言葉、100万回くらい言っていたような気がするあの頃。
5/18/2025, 12:29:03 PM