たつみ暁

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地下水路を走る靴音が、嫌味なまでに響き渡る。
まるで見つけてくれと言わんばかりに。

「私に、構わないで。先に、行って」

足をもつれさせ、息を切らせながら彼女が言う。
到底聞き届けるつもりは無い。

やっと、やっと取り戻したんだ。あいつらの手から。
彼女を奪われた時に負った深傷が癒えるまで、煮えたぎった復讐心を育てて。
どれだけ彼女が俺の中で大きい存在になっていたかを、思い知った。

もう二度と、繋いだ手を離さない。
もうこれ以上、何もあいつらに奪わせない。

「  !    !」

俺たちの名を呼ぶ仲間の声が聞こえる。
武器を手にした仲間たちが、水路の向こうから駆けてくる。

「行け!」

彼らは俺たちの脇をすり抜けて、追手に立ち向かってゆく。
最初は互いに信用ならなかった相手が、今はとても頼もしい。
俺たちは、手を繋いで走って。
手を取り合って、戦える。
今なら、それを信じられる。

2025/03/20 手を繋いで

3/20/2025, 10:11:25 AM