この夜景を、貴方と一緒に観たかったんだよ。
夜も深まってきた、美しい季節。
この時期だから尚更綺麗に観える、夜景がある。
植物園でゆっくりと過ごして居た私達は、初デートとは
思えない程にリラックスをして過ごしてした。
彼は花の写真を撮り、私は時折被写体になりながら、スマホで彼の事を撮ったりもしていた。勿論、花も撮った。
お互いに笑い楽しく過ごして居れば、時が経つのは早い。
昼食は食べ忘れ、花ばかり見ていたらいよいよ夜になる。
彼は苦笑いを浮かべ、お腹すいたね、と言う。
私も頷き、そうだね。と笑う。
園の中にある、レストランへと足を運ぶ。
その間にも、彼は優しく手を繋いでくれる。
「ごめん、夢中になり過ぎた。レストラン、何食べたい?
あそこ、沢山種類があって、僕凄く好きなんだ。」
私の方に顔を向け、少し申し訳無さそうに言った。
私は、気にしてない。と伝える。それでも、少し落ち込んでいる様子だった。
私も忘れていたのだから、彼は自分の事を責め過ぎなのに。
そんな彼を見て、少し悪戯をしたくなる。
ちょっとだけ驚かせて、元気になって欲しい。
私は腕時計を確認する。時間は、六時五十八分。
…良いことを思い付いた。
〔ねぇ、少しだけ、話を聞いてくれる?〕
立ち止まり、俯いている私を彼は心配そうに屈んて見つめて来る。罪悪感に負ける前に、言葉を続けた。
〔私ね、今日とっても楽しかった。だから、そこまで落ち込まないで。忘れてたのは、私も一緒だから。〕
彼の顔に繋いでいない方の手を添える。彼は、顔を少し
赤らめて、目をパチパチとする。そして、微笑んでくれた
「うん、ありがとう。…僕、キミが凄く物憂いな雰囲気だったから、フラれるかと思った。」
そう言って、繋いでいる手をしっかりと握る。
〔ほら、楽しかった証拠。見て、こんなに輝いてるでしょ?私の気持ちと一緒。貴方は?〕
私はパッと花畑を見て、彼に問う。目線の先には、暗かった花畑達が、爛々と輝きを放っている。
彼は、目線を花畑に写し、驚いていた。その顔には、
しっかりと笑顔になっていた。
「うん、僕も。綺麗だね。」
頷き、その返事を彼はした。
悪戯成功、だといいのだけど。
〔夕食を食べ終えたら、またゆっくり見ようね?〕
9/18/2023, 1:05:17 PM