なつの

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お題 花咲いて


私の家には、至る所に花がある。

食卓テーブルの中央には、100円ショップで買ってきた季節の造花が、これまた100円ショップで買ってきたパンダの置物と一緒に挿して飾ってある。
お腹には穴が空いていて、そこに茎を差し込むとまるでパンダが花束を抱えているように見えるのだ。ペタンと座り込む愛らしい姿は、その都度笑みがこぼれてしまう。
飽きないようにとラッコも同時購入したのだが、これが杞憂だった。なにしろ全く飽きがこないのだ。これでは本当にただの置物になってしまうと、リングやブレスレットなどの小物を入れては、なんとか存在感をアピールさせている。
観音開きのクローゼットの内壁には、私の好きなキャラクターの写真が貼ってあり、その中にも二種類の花がデザインされている。
桜と菜の花だ。
キャラクター達は、その花々を眺めては微笑ましい表情をしているので、見ているこちらも自然と口角が柔らかくなる。キャラクターと花の組み合わせは定番中の定番なので、策略に引っかかってしまった私も大概単純だなと、購入時には実証したものだった。今ではそれが、微笑みに変わるのだから、何が起こるかわからない。

他にも、玄関には、マグネットで吊るしてあるドライフラワーや、ドレッサーを開けば、イヤリングや口紅のケースにも小さな花が散りばめられている。夏の前に購入した白のサンダルにも、レースと思っていた部分が実は小さな花の形をしていたので、足元にも花を纏っている。

生花は匂いがきついものもあり、花によってはくしゃみがとまらないものもある。その分、造花や絵画や写真は体に影響が出ないのでありがたい。花が特段好きというわけではないのだが、気づけば私の周りは、花に囲まれていた。

死んで棺に横たわる際にも、身体中を花で囲っては眠りを装飾するのだ。

人生にはたくさんの場面で花が咲くのだろうと、目の前のベビーカーから、満面の笑みを浮かべている赤ちゃんを眺めて感じていた。

7/23/2024, 2:45:57 PM