窓から地上を見下ろすと、暗く、重い黒に広く、薄く撒かれた光の粒が見える。
某会社の社長の息子である俺が唯一共にいきたい人を逢引に誘い、来たレストラン。極一般人の家系に生まれた君と御曹司の俺。立場が違いすぎてどこに行けば君が喜んでくれるのか分からなかった。
「そんなもの、これから知っていけばいいでしょう?」
そう、自信ありげに君が言ってくれて俺は安心した。
中々肝心の食事が届かなくて暇潰しになるかと思い、窓の下を見下ろすが、何度も会食で見慣れた光景がそこに広がっていただけだった。これを綺麗と思うこともなくなった。
「綺麗…!」
その言葉を聞いて、俺ははっとする。目の前に座っていた彼女から発せられたものだった。これを綺麗だと思える彼女が美しい。そんな事を思いながら彼女に悟られぬよう、彼女を見つめる。
あ。きれいだ。そう思った。何よりも。頬を紅潮させ、子どものように無邪気な表情を見せる。そうした君の瞳に映る、光の粒一つ一つが。星みたいで。儚くて。眩しくて。
見た事あるのに見た事なくて。俺は財力があって、なんでも手に入れてきた筈なのに。君は俺が知らないものをいっぱい持ってる。
また、君の瞳に映るそれがみたい。俺の全部をあげるから、君の全部もおれに頂戴。
9/18/2022, 1:46:21 PM