僕は高校生になってから、俳句をはじめた。
もともと散文を書く人だったが、思いの外学校生活が忙しく、時間のかかる小説の執筆とは距離を置くようになったのだ。恥ずかしながら。
そこで、お手頃な、と言うと聞こえが悪いが、世界で一番短い詩に踏み込んだわけだ。
歳時記や句集を眺めていると、日本の四季の美しさをひしひしと感じる。その度合いは、日を増すごとに強まっていった。ついでに地球温暖化や異常気象への恐怖も高まるのだが、その話はまたの機会にしておこう。
俳句をはじめてから、季節の境目の匂いを知った。
春から夏になった瞬間、黄味が強い橙色の膜に包まれているような、懐かしい匂いがした。
夏から秋になったその日、薄い赤紫色をした流体が自分の頭の横をゆったりと流れてゆき、胸のつまるような匂いがした。
秋から冬になるときは、日常の匂いがした。虹の色と森の色をぐちゃぐちゃに混ぜたような、切ない色をした匂いだった。その匂いはゆるゆると形を変えながら、淡い淡い水色をした春に繋がってゆく。
なんてことを大真面目に、僕は感じているのだ。俳人気取りの自己満足かもしれないが。
題:冬の始まり
11/29/2024, 11:28:39 AM