ある峠の周辺に
狐に似た人がいるという噂がある。
なんでも、
狐目でそれはそれは美しい女の子なんだと。
私は一度でいいから会って見てみたいと思い、
その峠の近くまで行った。
でも霧が出てて
先の道も見えずらくて
カンペキに迷子になった。
ウロウロしていたら
お姉さん、ちょいとそこのお姉さん。
という声が聞こえた。
後ろを見ると
真っ赤な着物を着た綺麗な女の子がいた。
狐に似た人だと瞬時に理解できるほど
狐に似ていた。
迷子になってしもたん?
せっかく聞いてきてくれたのに
私は見とれていて
すぐには口を開けなかった。
私が教えたるよ。
道、ほんまにすぐそこにあんねん。
と、手を引っ張って案内してくれた。
その後は
峠の「すぐ」は信用しちゃダメなことがよく分かった。
30分近く歩いても道は出てこない。
狐に似た人と私の落ち葉を踏む音だけが
聞こえていた。
ずっと無言はさすがに気まずいから
私は狐に似た人に会いに来たことを話した。
あらぁ、そんな噂立ってはんの?
少し驚いた様子でそう言っていた。
ほんなら、お姉さんが行方不明にでも
なってしもうたら、
私が真っ先に疑われてまうねぇ。
それはあかんなぁ。送り届けななぁ。
狐に似た人がそう言った途端、
霧が晴れて目の前に道が見えた。
道に出ると真っ赤な夕焼けがよく見えた。
私、暇を持て余してんねん。
せやからまたいつでも来てな。
"Good Midnight!"
まだ話したいことがあった。
もっと一緒にいたかった。
そんな気持ちが溢れて止まらない。
けど、狐に似た人の方を見ると
夕焼けでできた
狐の形をした影絵が
そこにはあった。
4/19/2025, 6:01:50 PM