「昌美〜、その棚もう少しこっちへ移動できないか?」
いけるー。と大声を張り上げる。
今日は2人の家に荷物を運ぶ日。
重い荷物の運搬は圭祐に任せて私は棚や家具のレイアウトを決めたり、細かい微調整をしたりする。
部屋が完成するころにはすっかりと日が暮れてカラスが鳴いていた。
「今日は頑張ってくれてありがとな。」
圭祐からそんなねぎらいの言葉がかけられる。
愛する人にねぎらってもらえるなんてどれだけ幸せなことだろう。
そんな気持ちを抱えつつ、何でもないようにううん。大丈夫。圭祐こそ重い荷物持って疲れたでしょ。ありがとう。と、返す。
一ヶ月前私たちは籍を入れた。
圭介は収入が安定していないから親には反対されたけど何とかして結婚までこぎ着けた。
2人で住む家も決めて、憧れのマイホームをゲットした。
そんな昔のことを思い出していた。
今、私たちの間には3人の子供がいる。
長男の正哉、長女の圭子、次男の秀介。
皆すくすく育って今では正哉は小学校5年生だ。
子どもの成長が見れてうれしい反面。少し嫌なところもある。
それは、
「お母さん。今日のご飯はなんだい?」
「お父さん。まだ、ご飯の時間じゃないよ。」
と、お互いを名前で呼ばなくなったことだ。
はじめの頃はずっと名前で呼びあっいたのに、気づけば「お母さん」「お父さん」と呼びあっていた。
何だか昔が消えてしまったようで少し淋しい。
「おか〜さん!見て!テストでね、百点とったんだ!」
「そうなの!凄いね圭子!すぐ行くよ!」
「うん!早く早く!」
夜空にそっと呟いて圭子のもとへと向かう。
「圭介君。」
11/22/2024, 10:40:10 AM