フィロ

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お題に向かうといつも、そのお題からイメージする映像が頭の中に広がり始める

ただここのところ、そのイメージに心揺さぶられ過ぎることが多くなり、文字を起こしていく作業が息絶え絶えになることも少なくない

恐らく私は憑依体質なのだと思う
分かりやすく言えば、頭の中が、心が、抱くイメージに乗っ取られてしまう…のだ
そのイメージに負けない体力と精神力が、ここのところ心許ないのだ


それでも今回のお題だけは、乗っ取りと闘いながらでも書き残さねばならないと思う



「声が枯れるまで」のイメージは瞬時に頭を過った
それは、先日の能登の豪雨で犠牲になった14歳の少女だ

一人留守番する中、豪雨や川から流入する濁流に家ごと流されていく恐怖
気丈にもその様子の映像を友人に送っている
どれだけの恐怖であったろう…
とれだけ「助けて!」と叫び続けただろう…
それこそ、声が潰れるほど叫んだに違いない

そしてまた遺された家族も、彼女を探し彷徨いどれだけ少女の名を叫んだだろう
声が枯れるまで何度も、何度も…
声が潰れても、出ない声で何度も、何度も

結局彼女の声は濁流に飲み込まれ、
その後の連日の家族の声も、積み上げられた汚泥の中に虚しく吸い込まれていった


後日、1キロ先の沖合いから漁師によって見つけられた少女
きっと彼女の懸命の魂の叫びが通じたのだろう

「お嬢さんは良く頑張りましたよ 褒めてあげて下さい」 
とその漁師は彼女の父親に語りかけたそうだ


もちろん私は面識も無いし、彼女の声を聞いたこともない
それでも、生きていれば今頃運動会で大きな声を張り上げて元気いっぱいに声が枯れるまで応援していたかも知れないと、想像してしまう

残念ながら、彼女の声はもう二度と聞くことは出来ない




『声が枯れるまで』

10/22/2024, 4:55:22 AM