夜兎

Open App

曇天の空。
今にも雨が降り出しそうな重く沈んだ空模様に
心まで曇っていく。


お気に入りの傘は盗まれ
楽しみにしていた遊びに行く約束はドタキャン。
ついてないほどがあるそんな一日だった。

「あれ……葉月?」

雑踏の中でも、不思議とその声だけははっきり聞こえた。
そこに居たのは、自然と疎遠になったかつての恋人だった。

「遊真、その…久しぶり。」

「久しぶり。雨、降りそうだけど傘はねぇの?」

「その……実は、盗まれちゃって…」

「そっか。じゃあ、送ってこうか?」

手に持った傘を掲げながら、彼は首を傾げた。

どうしよう。素直に甘えていいんだろうか。
戸惑いが顔に出たのか、返事に迷ったその一瞬____

「こういう時は甘えとけ」


#cloudy

9/22/2025, 10:53:08 AM