好きって、何だっけ。
ある日、自分の中の好きがいくつか迷子になった。
チョコレートにコーヒー、それから猫。かわいい。紅茶を飲むならスコーンとクロテッドクリームにジャム。あとは……。
昼下がり、きらめく景色の中で心は迷子だった。日差しは鮮やかに世界を縁取る。色を薄めてしまうくらいの光を降らせた。あぁ、きっと今は心の中が真っ白なんだ。だってそこに確かにあったはずのものが全然見えない。
どこからか頼りなげなしゃぼん玉が飛んできた。ふわりと風に流されて、ゆらりと揺れるひかりを包んで。間もなく弾けて、最初からそこには何もなかったかのようで。
チョコレートにコーヒー。ふわふわの猫。クリームティーはコーンウォール式がいい。思い浮かべる好きなもの。思考の片隅に浮かぶ存在を、同じように並べたくない。並べられない。
しゃぼん玉よりずっと遠く、はるかに高く。どこまでも飛んで、誰の目にも映らない果てまで逃げて。でも消えないで。とても大切なんだ。だからこそ高く高く、どこまでも飛んでいけ。二度と思い出せないくらい。
〉高く高く
10/15/2022, 4:30:00 AM