春妃

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【もう一つの物語】

そこは海だった。
よく晴れた青い空の向こうに入道雲が浮かんでいる。

日差しで焼かれた熱い砂浜をゆっくりと歩く。
波が寄せては引き、引いては寄せる。
まるで僕たちの距離のようだった。

あの日。
僕が勇気を出していたら。
想いを言葉にできていたら。
何かが変わっていただろうか。

僕の隣に彼女はいない。

10/29/2024, 1:34:22 PM