ののの糸糸 * Ito Nonono

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No.47『圧倒的感謝』
散文/掌編小説

 たまにひとりになりたい夜がある。そんな時に限って、連絡して来るひとがいて。
『もしもし。元気してた?』
 彼女から連絡して来る時はいつも通話で、ひとりになりたい時でも、不思議と通話に出でしまう。
「元気元気! そっちは?」
 空(から)元気だと悟られないように、営業スマイルを顔に貼り付けて口にした。
『こっちは元気! てか、何かあったでしょ?』
 わたしの精一杯の虚勢も、彼女には何故か通じない。
「ないない。元気元気」
 これ以上掘り下げられたくなくて、下手くそな演技を続けると、
『……良かった。元気そうで』
 少しの間のあと、
『ところでさ……』
 いつもの取り留めのないお喋りが始まった。

 ごめんね。そしてありがとう。
 今は少しだけ、そっとして欲しい。

 心の中で謝りながら、それ以上に、感謝の言葉を彼女に送った。



テーマ:「ありがとう」そんな言葉を伝えたかった。その人のことを思い浮かべて、言葉を綴ってみて。

5/4/2023, 9:52:22 AM