ノーム

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『逆さま』


人生何が起こるか分からないものですね。

今まで順調に山を登ってきたのに、足を滑らかして崖から真っ逆さまです。

しかしまぁ、命綱をしていたので地面に落下する事は免れました。
不幸中の幸いですね。

ただ足にロープが絡まってしまって、頭逆さに宙吊り状態です。
不幸中の幸い中の不幸ですね。

そのままどうすることも出来ず、ブラーンブラーンとしていたら上に人影が見えました。

血が上ってクラクラとしてきた頭で、上にいる人に聞こえるよう大声で助けを求めます。

「頭に血が上って限界ですぅー!誰か助けて下さいぃー!」

ってね。

そしたら上にいた人も気付いたみたいでして。

「よしっ、任せろぉ!」

なんて力強い返事をしてくれたんです。
私、安心しましたよ。

(あぁ、これでやっと引き上げてもらえる!)

って、そう思いましたもん。
そう、思ったんですけどね……。

──バシャバシャバシャッ

ビックリですよね。
上にいた人……いや、上にいた阿呆は私の顔めがけて冷水をかけ始めたんですよ。

止めるように言おうとしても『やめゴボォ!なにガパァ!』なんて言葉しか出せませんでした。
当たり前ですよね、冷水がめっちゃ鼻と口に入ってくるんですもん。

正直もうね、てめぇこの野郎ぶっ"ピー"してやる
とか思いましたよ、えぇ。

そして最後に阿呆が一言。

「どうだぁ!これで頭が冷えただろう?なに、人として当然の事をしたまでだ、感謝はいらん!」

そう言って『ガハハ』と笑いながら去っていきました。

…………いや、いやいや、違うから、そうじゃないから。


引き上げろよ、いやほんとマジで。

12/6/2022, 6:05:40 PM