霜月 朔(創作)

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どうすればいいの?



静寂の夜。
揺れる蝋燭の灯火が、
冷たい部屋を仄かに照らします。
目の前には、真紅に染まった、
もう微笑むことのない、大切な人。

私は知っていました。
私の心に闇が棲んでいた事も。
貴方が私を護る為に、
私に全てを捧げようとしていた事も。

銀色の刃が、貴方の赤を纏い、
私の手の中で、鈍く光っていました。
…これで終わるから。
そう囁いた、貴方の優しい声が、
今も、耳の奥で響き続けています。

私は何をしたのでしょう。
貴方の血の温かさが、
冷たく変わりゆく中で、
私は動けずにいました。
私の闇によって、
赤に染まった愛しい貴方を、
ただ、見つめるだけでした。

夜が、静かに明け始めます。
貴方の微笑みは、
もう二度と帰りません。
私の心の中で、貴方の声が囁きます。
…これでよかったんだよ。
けれど、私には分かりません。

こんなにも私を愛してくれた貴方を、
私も愛していました。
貴方さえ傍にいてくれたら、
私は闇に堕ちても構わなかったのに。

…どうすればいいの?

私の心に残していった、
貴方の影に向けて、問い掛けます。

…どうすればいいの?

貴方の返事は返ってきません。
ならば。
私は、その答えを求めて、
貴方に逢いに行きます。

11/21/2024, 8:02:30 PM