小説
迅嵐
玉狛支部でのんびりしていると、扉から小南が入ってくる。うんうん視えた通り。
「ん~?誰だろ」
ふと、小南の未来の中で、羽っ気のある黒髪をもつ少年がボーダーに入るのが視えた。
「小南~、これ誰?」
彼女に事細かく説明してみると、何故だか少し誇らしげに少年の名を口にする。
「准よ」
大きくなったボーダー基地をうろついてみる。
「嵐山准、かぁ」
なんかすごくイケメンだな。性格も良さそうだし、広報担当とか合ってそう。仲良くなれたら推薦するのもアリだなぁ。
まだ会ってすら居ないというのにおれは未来に考えを馳せる。その中で、視界の中に飛び込んできたのは、''赤''。
「えっ」
考えを中断し顔を上げると、そこには今し方頭の中を占拠していた嵐山准が立っていた。
「わっ、すみません」
曲がり角でぶつかりかけていたらしい。形のいい眉を下げ申し訳なさそうにする彼は、そこに居るだけでキラキラして見えた。
「君…嵐山准、くんだよね」
「え!俺の事知ってるのか!」
「なんたっておれは、未来が視えるサイドエフェクトを持っているからね」
「えぇ!?」
なんだこいつ。おもしろい。
一挙一動が素直で可愛らしい。…?可愛い?こいつ男だぞ!!しっかりしろおれ!!
「未来が視えるって…もしかして迅くんって君のことか?」
「え?なんでおれの名前知ってるの?」
「ふっふ…なんたって俺は桐絵の従兄弟だからな!」
「小南の従兄弟!?」
初耳だった。あいつ、先に言っとけよ…。
「…なら話は早いな。おれ迅悠一。よろしく」
「俺は嵐山准だ!よろしく!君と一緒に戦えるなんて光栄だ!」
ふわりと笑う彼に手を握られる。その笑顔を見た瞬間、何かがカチリと噛み合い、動き出した。
4年後
「…あの時がおれの初恋だったとはなぁ」
「ん?何か言ったか?」
横を歩く嵐山に目をやりながら通路の角を曲る。あーあーこんなにイケメンに育っちゃって。おれって面食いだったんだなぁ。
「なーんも。ほら、早くしないと会議遅れるよ」
「ほんとだ、ちょっと走るか!」
おれは、はいよーと間の抜けた返事を恋人に返しながら、小走りで会議室に向かった。
1/6/2025, 2:22:09 PM