こっこ

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母を亡くした日、雨の中に桜が咲いていた。満開の桜の下を車椅子の母と歩いた。桜を見る度に、優しい母の笑顔が浮かんで悲しくなった。
大好きだった桜をただ、キレイだと見上げることができない自分がいた。それから桜を愛でるまで3年かかった。
今、私の隣には今年ランドセルを背負って入学する孫のルナがいる。
手を繋いで桜並木の下を歩く。風が吹けば舞い散る桜の花びらをキャッキャと笑いながら追いかける後ろ姿を見て思う。
悲しい思い出の桜から楽しい思い出の桜に更新された、と。アップデートされた思い出の中で、また日々が続いていく。
自然と人間も強化されていくのだろう。
大好きなメロディーが頭の中で鳴り響く…。
RCサクセションの清志郎の曲「空がまた暗くなる」
「おとなだろ 勇気を出せよ
 おとなだろ 知ってるはずさ
 悲しい時も涙なんか 誰にもみせられない
 (省略)
 悲しい時も涙だけじゃ 空がまた暗くなる」
顔を上げて桜並木を歩く私がいる。





4/5/2025, 5:55:09 AM