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▶125.「ラララ」
124.「風が運ぶもの」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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「どこに飾ろうかしら?あまり日の当たらない場所の方が色持ちがいいわよね。ラララ♪ラン、ラン♪ここもいいわねえ、迷っちゃうわ」

「おう、クロア。ここにいたか」
「きゃっ!もう、驚かさないで」

クロアが突然のことに驚いて振り返ると、寝室のドアから顔を覗かせているシブの姿があった。絵を持って壁に当てていた手を一旦下ろして、そちらへ向かう。

「へぇへぇ。あいつはもう帰ったぞ」
「あら、私ったら挨拶もしないで。呼んでくれたらいいのに」
「あいつはそう言うやつじゃないから気にすんな。それより、飾る場所は決まったのか?」
「迷ってしまって、決まらないの」
「お前の仕事場でもいいじゃないか」
「ああ!そうね!あそこなら日も入りにくいわ」

すすっと部屋を出てシブの隣に並んで腕に触れれば、意図を汲んでシブはエスコートの姿勢を取った。
「さ、行きましょ」
「分かったよ。絵も持ってやるか?」
「ううん、軽いし自分で持ちたいわ、ありがとう」
「おう」

そのまま敷地内にあるクロアの仕事場、仕立て屋に向かう。
「あー、クロア。今日来た‪✕‬‪✕‬‪✕‬なんだがな」
「ええ、どうかしたの?」
「あいつとは長い付き合いになりそうだ。それでな」

シブが言いにくそうにしているのを、クロアはじっと見ている。

「あいつは変なやつだから、変なことが起きても気にしないでやってくれ」
「まぁ!シブったら失礼ね!あんなに礼儀正しい方に!」
「ああ、違う。そうじゃねえ、そうじゃねえんだが…」

クロアの手に伝わる、きゅっと力の籠った腕に、それがシブにとって本当に言い難いことなのだと察することができた。

「わかった、わかったわ。何か起きても気にしない。気にしないから誰にも話さない。これでいい?」
「ああ…俺は良い妻を持ったな。あんがとよ」
「あら、今頃気づいたの?でも気分がいいから許してあげるわ。歌も歌ってあげる」
「それはありがてぇこったな。じゃんじゃん歌ってくれ」

「うふふ、さぁ午後のお客さんが来る前に飾りましょう」
「おうよ」

ラララ、ラン、ラン

客のいない仕立て屋の中で、春の陽気を謳う声がしばらくの間響いていた。

3/8/2025, 9:47:19 AM