僕は、小さな村に住んでいた。
何も無い、本当に小さな小さな村だったけど、みんなとても優しかった。
そんな中、僕は其処に住む少女に恋をしていた。
二人で見る、海に沈む夕陽。
僕が採った椰子の実のジュースを飲んだりしたね。
どんなに愛しくても。
僕は、その娘に触れる事は出来無かった。
だって、僕は触れた人間の寿命を吸い取ってしまうから。
どんなに大切だと思っても。
僕は、その娘と口づけをする事すら叶わないんだ。
そんなある日。
向かい合って、浜辺に座っていたら。
突然、後ろから風が吹いて来た。
「大丈夫かい?砂、目に入らなかキスしたった?」
僕は訊ねた。
そして、驚いた。
その娘は、唇をきゅっと尖らせ、頬を染めていたからだ。
「風が、貴方の匂いがしたから。貴方とキスした気分になってたのよ」
風が止んだ事を残念がり、小首を傾げながらはにかんでいる。
だから、それ以来。
風が吹くと、あの娘を思い出すんだ。
夜空と同じ色の髪、鳶色の素肌、白い麻のワンピース。
忘れられない、何時までも。
何時までも、僕の心から離れない。
5/9/2026, 2:10:42 PM