星空の下で彼氏に振られた。
同じ星空の下で、彼が知らない男の人とキスをしているところを見た。あまりに美しすぎるその光景に目を奪われながら、泣くことも喚くこともできなかった。
「好きな人ができてたなら、そう言ってくれればよかったのに。わたし、自分の悪いところばっかり考えて、ずっと苦しかったのに」
友達がコーヒーを漂う氷をストローで弄ぶ。ゆらゆらと流されてはコップにぶつかるそれに、自分を重ねてしまいそうになる。
「まあ、男の人を好きになったって言いづらかったんじゃない?不誠実なのには変わりないけどね」
わたしの味方なのか、誰の味方なのか、友達はあくまでも他人だと言わんばかりのことしか言わない。そういうところ、好きじゃないけど嫌いになれない。
「プロポーズされると思ってた。だってフレンチの後に星が映える丘の上だよ、期待しないわけないじゃん」
三年半も付き合ってたんだし、と続けるにはあまりに苦しくて唇を噛んだ。
思い描いていた理想像とはまったく違う現実。その苦しさに未だに耐えきれないくせに、彼との思い出をなぞるようにあの日から一年が経って、わたしはあの場所へ向かってしまった。それでケリをつけるつもりだった、はずなのに。
瞼を下ろしてしまえば浮かび上がってくるのは、人目も憚らずに泣きながら幸せそうにキスをする二人。わたしには全く触れてくれなかったくせに、彼は細身の男の人を抱き寄せていた。
「人生ってむずかしいね」
この話題にはもう飽きたというように、友達が目線を窓の外へ投げる。「ちょっとくらい慰めてよ」と掠れたわたしの声に漏れた笑い声が聞こえた。溢れそうな涙を乱雑に拭って歪んだ視界の中で、明かりに反射する眩い金色だけが見えた。
4/6/2026, 5:17:31 AM