ストック

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15歳の誕生日、私は神への生贄として捧げられる。

この村で巫女として生まれたときから、私はそれはそれは大切に育てられてきた。
上等な着物や他の人々とは違った豪勢な食事。
家族も村人たちも、私に恭しく接してくれる。
幼い頃からずっとそうだったから、私は疑問にも思わなかった。

12歳になったとき、「あなたはいずれ龍神様のお嫁さんになるのよ」と言われた。
その言葉が意味することをそのときの私は理解できなかった。
しかし、子供心に「とても名誉ある役割なんだ」と誇らしく思った。

14歳になったとき、私は書物でその言葉に真意を知った。
龍神様に嫁入りするということは、私は生贄になるということ。
人々が私を大切にしてくれたのは、私が神様への供物だったから。

それを悟ったとき、静かな諦念とほんの少しの使命感。
すべては最初から決まっていたこと。私は15歳までしか生きられない。
でも、私が生贄になることで村に安寧がもたらされるのなら、それでいい。
それは私にしかできないこと。だから、私は運命を受け入れる。


15歳の誕生日を迎える1週間前の夜、幼馴染みの男の子がこっそり私を訪ねてきた。
小さい頃いつも遊んでいたっけ。
これが最後になるかもしれない。私は彼と話をしようとした。
窓に手を伸ばすと、彼の腕が私の手を掴む。
驚いてしまった固まってしまった私に、彼は言った。
「一緒に村を出よう」
彼の言葉に私は更に驚いた。
村を出る。
そんなことは考えたこともなかった。15歳より先のことなんて考えたこともなかった。
「こんな風習で君がいなくなっちゃうなんて嫌だ。だから、一緒に村を出よう」
彼が手を伸ばす。

私は彼の手を――。

8/7/2023, 1:11:11 PM