「『さぁ』とか『ねぇ』とか、呼びかけ系が登場するお題って、珍しいような気のせいなような」
某所在住は今日も今日とて、過去のお題を確認しつつ、何をどう書こうか悩んでいる。
いつもの「少し言葉を足せば」を使えば、
「さぁ冒険だけでは済まない状況になりました」
とか、
「さぁ冒険ダイジェストをご覧に入れましょう」
とか、少し話題を逸らすことくらいはできる。
問題はどちらにせよ、「冒険」に類似した「何か」は確実にひとつ、出さなければならないこと。
「冒険、ぼうけんねぇ」
物書きは天井を見上げた。ソシャゲのダンジョン周回は冒険のうちに入るだろうか。
――――――
部署の異動は、冒険のひとつと言えます。
総務から経理へ、経理から法務へ。
ときには今まで事務の部署だったのに、いきなり保険の営業に回されることもあるでしょう。
今日は完全に厨二ふぁんたじーな職場の、
完全に突然通告された、異業種冒険のおはなし。
「ここ」ではないどこかの世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこは世界から世界への渡航申請を受理したり、
滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムが他の世界で悪さをしないよう回収したり。
それぞれの世界が「それぞれの世界」として、独自に独立して存在できるように、
いろんな仕事を、しておったのでした。
今回、お題回収役として異動の冒険に放り出されるのは、チートアイテムを収蔵・保管し続ける部署、
収蔵部収蔵課の局員さん。
奥多摩出身です。白黒ピコピコ8bitゲームをリアルタイムでプレイした世代です。
あるいはテレビがアナログから、地デジに移行するその瞬間を、哀愁とともに見届けた世代です。
で、そんな奥多摩さんの収蔵課に、
先月「本来は自分の世界のいろんな場所を映していた水晶」が収容されてきまして。
この水晶を「地デジ未対応水晶」と名付け、活用方法を研究し始めたのでした。
だってこの水晶、普段はザーザー、磁気嵐だの砂嵐だののような映像ばっかりなのです。
そしてこの水晶、誰か何かをアナログもとい物理的に触れさせると、ちゃんと「誰か」「何か」に関連した映像が映るのです。
これはもう「地デジ未対応」でしょうと。
「『自分の世界のあちこちを映す』って機能が、
『その世界』が滅んじまったから、『自分を持った者の何かを映す』だけに限定されちまったのか」
なるほど、なるほど。そういうことか。
奥多摩出身の局員さん、実験成果をもとに、地デジ未対応水晶の「今の能力」を結論付けます。
「こいつには、『自分に触れた誰か』と、空間やら時間やらを関連付ける能力がある。
だから端子繋げばファミキューブが動くし、ケービーのスカイライドも遊べるワケだ」
便利よな。ハードが少し壊れてても、ソフトが無事なら、ドリームサターンのゲームも遊べるんだぜ。
奥多摩さんが上機嫌で、昔々のゲームをピコピコ、ぴこぴこ、地デジ未対応水晶で遊んでいると、
「見つけましたぞ奥多摩くん」
ようやく、お題回収。
奥多摩出身局員さんを部署異動の冒険に連れていく、環境整備部 空間管理課の人が、現れました!
「それが、ちでじみ水晶ですな?
その水晶は、我々空間管理課の業務に有益な水晶になると思われる。空間管理課で使わせてもらうぞ」
どうやら奥多摩さんがまとめたこの水晶の、「人と空間と時間を結びつける能力が少し残っている」という
調査レポートが、
別の部署のひとの目にとまり、「その水晶、ウチで使いたい!」に繋がったようなのです。
「はぁ。そうですか」
うぅ。せっかくの俺のスカイライドが。バイオクライシスが。セェガァが。
奥多摩さん、心のなかで号泣しつつ、でも仕事なので、水晶を手放す決意をします。
地デジ未対応水晶は、あくまで管理局の収蔵品なのです。奥多摩さんのゲーム機ではないのです。
「じゃあ、収蔵部収蔵課から、環境整備部空間管理課に所有権を移すので、収蔵場所移管届等々、書類の記入お願いします」
「もう済んでいる。君も来るのだ奥多摩くん」
「は?」
「その水晶を一番よく使えるのは、奥多摩くんである。よって君も、空間管理課に来るのだ」
「は……?」
ほら、どうだ。これが君の新しい辞令。
空間管理課の職員が、奥多摩さんに紙切れを渡します。そこには確かに奥多摩さんを、収蔵部から環境整備部に異動させる文言が書かれています。
さぁ、冒険です。部署異動という冒険です。
「空間管理課って、具体的に何するの、」
「その辺は後ほど説明するのだ」
空間管理課なんて、厨二ふぁんたじーな部署に、これから奥多摩さんは異動の冒険を始めるのです。
不安と心配で、目が点々。奥多摩さんはそのまま、「空間管理課」へズルズル、連れていかれます。
どんな冒険が待っているかは、今後のお題の配信次第。 しゃーない、しゃーない。
2/26/2025, 4:53:15 AM