もも

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寒さが厳しい1月の皆は今日からお仕事だと言う今日。人形しかいない自分の工房を飛び出して、自分がはじめて作った人形と一緒に行きつけの喫茶店までの道を歩く。
今日も寒いのかと思ったけど、外は思ったよりも暖かくて、歩き慣れた道も歩き安くてとても助かる。
お客の来ない工房に居続けると時々自分が何者なのかわからなくなる時が有って虚しくて、悲しくて誰かに話しに行きたいのに周囲には頼れない。

親友は自分が好きな人と結婚した。
妹には婚約者が見つかった。
師匠には頼れる人を探して来なさいと放り出された。

本当は誰にでも頼っていいんだってわかってるのに、誰にも頼ったらいけないって勝手に決めてるのは俺の心。
自分のした選択でひどく妹を傷つけたあの日から、俺は自分の心を殺してしまってどうにもうまく出せない。

「晴れててくれて良かった。
今日こそ誰かとお話出来ればいいんですが。」

恋人が欲しいわけではない。
ただ、俺が俺らしく居てもいいって言ってくれる誰かが欲しいだけ。
そんな構って思考な俺を受け入れてくれる人をさがすのは難しい。
少しだけ寄りかからせてくれる人はいないのか…。
そんな風に考えていつもいつもフラフラしてしまう。
通りすぎて行く人が楽しそうに笑うのをどこかぼやけたような視界で眺めながら、小さくため息をつく。

「せっかく暖かいいい日なんです!
気分を明るく行きましょうか。」

肩にのせた人形の頭を撫でると、無理やり自分の気持ちを上げ空を見上げる。
こんなにいい天気なのだからきっといいこともある。
まだまだ厳しい寒さが続くかもしれないが、いつか春がくるように辛いことばかりでもないだろう。
珍しい冬晴れの中、新たな世界をひろげるため目的地に向かうのだった。

『冬晴れ』s,t

1/5/2024, 11:02:09 AM