真岡 入雲

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【お題:麦わら帽子 20240811】【20240818up】

幼稚園の時の夏の制服、帽子が麦わら帽子だった。
それから小学生に上がってからの数年は、夏外で遊ぶ時は帽子を被りなさいって言われて、大抵は麦わら帽子を被っていた。
高学年になると麦わら帽子は何故か恥ずかしくて、普通の帽子を被っていたけれど、まぁ麦わら帽子の方が涼しかったのは確かだ。
中学、高校と夏に帽子を被った記憶は少ない。
どちらかと言えば、冬に寒さとお洒落で被っていた記憶ばかりだ。

で、今だけど。

「夏って言ったら、スイカと花火に蚊取り線香でしょう」
「いやいやいや、ビールに枝豆、そして冷や奴だよ」
「夏?ゲリラ豪雨じゃないっすか?」
「夏はフェス一択っすよ!」
「海!プール!水着の女の子!」
「安西さん、それセクハラです〜」
「えっ、マジで!」

みんなでワイワイ騒ぎつつも、視線は画面で手は忙しなく動く。
お盆ソレなに美味しいの?状態の我社では、世間の連休中も普通に出勤して残業している。
何故なら八月は繁忙期だから。
それでまぁ、世間の連休に浮かれている人々と自分達の境遇の差に絶望しそうになっていたところ、何とか気を紛らわせようと始めたのが、『夏と聞いて思い浮かぶもの』という、あまり頭を使わずに済む話題。

「私は麦わら帽子かねぇ」

八人居るメンバーの中で、最年長の大場さんが呟くように言った。

「あ、私も昔はそうでした。でも今は麦わら帽子のイメージが変わっちゃって⋯⋯」
「あー」
「うん、確かに」
「『夏!麦わら帽子!』じゃなくなったな」
「うん?どういうことだい?」

大場さんの年齢だとこれはわからないかも知れないけど。
他のメンバーは皆頷いている。
そうだよね、こう言うの好きな人たちが集まってるもんね、うちの部署。

「『海賊!麦わら帽子!』とか、『麦わら帽子!ルフィ!』っていうイメージに変わったな」
「そうそう、そうなのよ」
「言われてみると、そうだね。海を背景に麦わら帽子が描かれたイラストがあるとして、何を連想するかって言われたら」
「海賊」
「ルフィ」
「ONE PIECE」
「って、なっちゃうよね。ONE PIECEを知らない頃なら確実に『夏』ってなるけど」

皆のその様子に大場さんは腕を組んでコクコクと頷いている。

「なるほどねぇ。そう考えると、そのONE PIECEって言うのは凄いね。一部とはいえ、人間のイメージをガラッと変えたんだから。私にはできない事だ」
「本当、凄いっすよね。これが日本だけじゃなく世界での話だし」

うんうん、凄い話だ。
そしてそれが、自分たちと同じ日本人がやってのけている事に、勝手に誇りを持ってしまう。
作者の先生と知り合いでも何でも無いのにね。
人間て意外と単純な生き物なのかもしれない。

「ふむ、で、福留さんの今の『夏と聞いて思い浮かぶもの』は?」
「今はそうですね、カキ氷です」
「フラッペも美味しいですよね」
「マンゴーとか堪らない」

連日の猛暑で食べたくなるけど、家に帰る頃にはお店は閉まっている悲しさ。
お陰で近所のコンビニでガリガリ食べる冷たいアレとか買って帰る毎日ですよ。

「あ、カキ氷のシロップって味は全部一緒って話し知ってる?」
「違うのは匂いだけなんだっけ?」
「そうそう」
「いつも思うんだが、ブルーハワイって何味なんだろうな」
「えっ、ハワイの味じゃないんすか!」
「ハワイの味って何だよソレ」
「ブルーハワイは、今はラムネ味が主流らしいっすよ」
「ラムネ味⋯⋯、そうなるとラムネ味って一体⋯⋯」

どうでもいい事で盛り上がりながら夜は更けて行く。
手は忙しなく動き、視線は画面に釘付け。
このまま、あと数時間は会社に拘束されるのだ。
きっと今日も、終電ギリギリの時間まで帰れないだろう。
無事解放されて家に帰って、レンチンしたコンビニのお弁当を食べるのではなく、金髪のぐるぐる眉毛のコックさんの美味しい手料理が食べたい、とか思う程度には私の疲労は蓄積しているようだ。

あー、この忙しいのが終わったら、美味しい食べ物食べ歩きするぞー!


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(´-ι_-`) サンジさんの飯、食べたいなぁ (✽´ཫ`✽)








8/11/2024, 3:08:56 PM