三三三

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「……なんでそんなにびっしょりなんだ」
一限の教室へ着き、キミの隣の席に座るなり、鋭い指摘が入る。
「遅刻する!って思って家を出てさ、バスを待ってたら雨が降ってきまして……今日に限って折り畳み傘持ってなくて……」
えへへ、と笑う私にキミは呆れ顔だ。
「天気予報みてなかったのか?今日の午前中は大雨だってやってただろう」
「普段テレビみないんだよね。そういえばアプリでも確認しないかも」
「もう少し計画性を持て。それから濡れたままじゃ風邪ひくぞ」
ハンカチは?とキミが聞いてくる。慌てて家を出たせいで持ってくるのを忘れたことに気がつく。
そんな私の顔を見て、キミは自分のハンカチを差し出した。
「ほら、とりあえずこれ使え」
「いいの?」
「風邪をひかれて看病して、なんて言われたほうが嫌だからな」
ありがとう、とお礼をいって体を拭く。
「そういえば、道路に花いかだができてたよ」
「?あれって水辺に桜が溜まっていることを指すんじゃなかったか」
「本当はそうだけど、道路に川ができててさ。散った花びらがずーっと流れていってたの。もう花いかだっていうか桜の川みたいだったんだ」
「あー、なるほどな」
「晴れたらさ、きっと水が乾いたら桜の道になるよ。今日の帰り、晴れてたら歩いて一緒に帰ろうよ」
そう言うとキミは柔らかく笑って、晴れたらな、と一言だけ言った。
きっと晴れる、と私は思った。桜が舞い散るなかで春色の道を二人で歩くイメージが浮かんだところで始業のチャイムが鳴った。

4/10/2024, 12:36:52 PM