「こんばんわ。少し僕とお話しませんか?」
暗い夜を遠回りをして歩いていた私は
そんな言葉が聞こえて
足を止める。
私に声をかけたのはきれいな茶色の髪を持っている
青年だった…
「今日はとても満月がきれいに見えるね……」
彼は私に喋りかける。なんだろう…
「なにか用ですか…」
彼は私の問には答えず笑いながら
「こっち、こっち。一緒に満月でも見ませんか?
とってもきれいに見えるんだ。」
別にこのあとに何も用事はないし……
帰る気分にもなれない……
怪しいけど少しならいいか…
私は彼の隣に座る。
心地よい風が吹いていて気持ちがいい。
「ここ、とっても風が気持ちいいんだよ。」
彼は笑いながら私に声をかける。
「そうですね…」
ボーっとこの先から見えるススキを
見つめている。
「ここススキがたくさん咲いてるんですね…」
満月と合わさってとても不思議な感じがする。
それにまっすぐ伸びてとても
「かっこいい……」
「ススキがかっこいい?」
「はい……。。2メートルも育ってどんな
地形でもまっすぐに穂をつけて育つの
かっこよくないですか?
それに昔は神楽で使われていたらしいですよ」
私の言葉に青年はびっくりしたように私を
見ている。
なにかおかしなことでも言っただろうか…
「なにかおかしなことでも言いましたか…」
私が問うと彼は嬉しそうに笑って言った。
「ううん。大丈夫だよ。そっかススキがかっこいか……
そんなこと言う人初めてあったよ(笑)」
「そうなんですか?」
「うん。皆あんまり関心を示さないからね。
ここに咲いていても見る人もあんまりいないから…」
「そうなんですね。」
「うん。彼らにはもっと沢山の意味があるのに…」
「花言葉ですね。『生命力』・『活力』ススキに
ピッタリの花言葉ですよね。」
そう言うと彼は驚きながら私をみた。
「君は、すごいね。でもススキにはロマンチックな花言葉もあるんだよ。『なびく心』・『心が通じ合う』・
『憂い』。君は知っていた?」
そんな花言葉があったんだ……
「初めて知りました。すごく良い花言葉ですね。」
「そうだよね。僕もそう思うよ。」
彼はボーっとススキを見つめる。
「そろそろ時間だ……」
彼は一言言うと私にとある事を聞いてきた。
その言葉に私はうなずきながら答えた。
すると一気に風が吹き抜けその青年は消えていた。
彼のいた所にススキの穂が数個落ちていた。
『君は"彼ら"が好きかい?』
「はい。好きです。」
11/10/2023, 4:50:52 PM