遅れましたが、書けました。
▶19.「キャンドル」の値段
18.「たくさんの想い出」
17.「冬になったら」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
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宿屋の娘視点
食堂に夕食を食べに来た宿泊客への対応が落ち着いた頃。
外に出ていた客がひとり戻ってきた為、私は受付に戻ってきた。
「おかえりなさいませ」
「ああ。忙しい所すまないが蝋燭が1本ほしい」
この町に住んでる人は日没後ほどなくして眠りにつく方が多いのに、目の前の客は頻繁に蝋燭を買い求めるから、少し珍しく感じる。
「大丈夫ですよ。銅の6いただきます」
「確かめてくれ」
「はい。ちょうどですね」
3日に1回は買っている。
眠れなくて、しかも暗闇が怖いのだろうか?
この人、旅人って言ってたけど、それでやっていけるんだろうか。
客に興味を持つのは良くないことだけど、なんだか心配になる。
お母さんは金払いが良い客だって喜んでたけど。
(あ、そうだ)
「すみません、ちょっと待ってもらえますか」
「わかった」
(いつも出している蝋燭、ちょっと臭いんだよね)
私は奥に入り、少し高い値段の蝋燭を取り出してきた。
「あの、もし良かったらでいいんですけど、こっちの蝋燭を試してみませんか」
「ふむ」
差し出すと受け取って蝋燭を眺めているが、その表情は怪訝そうにしている。
「あなた、よく蝋燭を買うから。もしかして眠れないのかなって。値段はそのままでいいから!使ってみて!」
客の反応に慌てた私は、素の言葉づかいに戻ってしまった。
「そういうことか。気遣い感謝する」
「え、じゃあ…!」
「しかし差額は払わせてもらおう」
(なんで!?)
「その様子だと、この申し出はあなたの独断だろう。だとすれば、あなたがここの主人である親御さんに叱られてしまうかもしれない。それは避けたい」
この旅人さん優しい。もしかして優しすぎて不眠になっちゃったの?
「でも…」
「いいんだ。この蝋燭は香りが良さそうだから使いたい。いくらなんだ?」
「あと銅が2と鉄40…」
「わかった。手を出せ」
じゃらじゃらと私の手の中にお金が落ちてくる。
銅2と大鉄4だ。
「私は不要なら断る。だから、そんなに気にしなくていい。薦めてくれてありがとう」
そう言った旅人さんは、部屋に入っていった。
私はお金を握り締めたままボーッとしていたみたい。
結局お母さんには叱られた。
でも、旅人さんがその後も高い蝋燭を買ってくれたから、
気づいたお母さんが、よくやったって、ご褒美に1本あたりの差額分と同じ、銅2と大鉄4をくれた。
嬉しいけど、ちょっと思ったのと違ったなぁ。
11/20/2024, 8:45:13 AM