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『花の香りと共に』


花の香りと共にあなたの影を追う


(……この匂いは、カーネーションだったのか)

ふと横を通った花屋。
記憶の欠片が満たされるように、割れたガラスが継ぎ接ぎされていくように心が満たされた。

「ふふ、カーネーション、綺麗に咲いたんですよ」

嬉しそうに微笑むその人は愛おしそうにカーネーションを撫で、その瞳はかつてのあの人の瞳と同じものだった。

「──1本、ください」

その人は少し驚いた様子でこちらを見た。
少しオロオロとしており、ふと、自分が泣いていることに気がついた。

私は慌てて涙を拭き、申し訳なくなり思わず頭を下げた。

「あ、頭を上げてください……!
贈り物ですか?」

「あー、はい。
妻へ……」

「わかりました」

すぐにラッピングをし持ってきてくれた。
可愛らしいリボンに、美しく咲いている、純白のカーネーション


その香りはまるで、横にあなたがいるように感じて、そして───


少し悲しそうに笑っている、あなたの顔があった。



白のカーネーションの花言葉 :

「亡き母を偲ぶ」「純潔の愛」「尊敬」、「あなたへの愛情は生きている」

3/17/2025, 5:17:30 AM